「死を恐れたって良いのですよ。」
眠りながらも、慄いてしまう様な情景を思い出しているのだろうか
涙をポロポロと溢しながら、赤い、紅い髪を持つ青年(いや、少年と言う方が妥当だろう)が
己の中に深く、深く根付く暗い闇に囚われている
「人たるものは、本能的に恐怖と言うもの持っているのだから。」
シーツを胸の辺りできつく掴み、その夢の中の誰かに、いや、全てのモノに謝罪する
ごめん。ごめん。殺して、奪って、ごめん。
眠りの中でも、恐怖に縛られ、自分の罪に縛られるルークに
そっと、そっと・・・いつもの私では無いような声音で語りかける。
(ガイ達がみたら、気が触れたと混乱するのだろうか)
「恐れて。怖いと言ってごらんなさい」
きっと今、私は笑っている。
いつもの貼り付けたような笑顔ではなく夜、闇に魘されて目を閉じている彼だけに向けられた笑顔。
ゆっくりと、唇を寄せ目尻に溜る涙を舐め、汗に濡れ頬に張り付くる髪をそっと、払う。
そうこれは、いつもの行事。
(誰も知らない。彼自身も知らない。私だけの知る、貴方への奉仕)
「ルーク、ルーク・・・・愛しています」
生憎、私自身は恐怖という概念を持ち得ません。
でも、貴方を失うとしたならば、その恐怖を感じることが出来るのでしょう。
私に人たるものを教えたのはルーク。貴方以外には居ないのですから。
「貴方だけなんですよ」
私の師であるネビリム先生は、私に人とは。と言う事を教えてくれたけれど私自身が持ち得なかった、愛情、執着、痛み・・・・
この様な、どうして良いか判らない感情は教えてはくれなかった。
貴方の微笑みに、温まり
貴方の涙に、心揺さぶられ
貴方が声に出す事の無い、想いに
私は、愛しさを覚えた。
その貴方の不器用なまでな生き方に、惹かれ、焦がれ、愛したのだ。
「囚われるのは、私だけにしてください」
死に囚われるなんて許さない。
だから。
だから、ルーク。
「怖いと。言ってごらんなさい。」
そしたならば、私が。
そう、私が。アナタを殺して差し上げます。
怖いだなんて感じないように。
ゆっくりと、貴方がその命を世界に差し出すその時までに、私が。
貴方を、殺して差し上げましょう
そして、貴方の命が尽きるその瞬間
「私の心も差し上げますからね。」
だから、私は貴方と共に、逝くのです
ほら、だから。
「さぁ、私にその命を。」
「助けて、誰か・・・・怖い。怖い。怖い・・・!!」
夢に魘されるルークが涙と共に、告げた
愛しかたなんて、知らない。
習わなかったから。
知らないものは、知らない。知る事も無いだろう。知る瞬間、私は消えるのだから