もう、乾ききって錆付いた剣を振り下ろす。
ガリ・・・血の錆で、事の他上手く切れない剣は、耳障りな音を立てて肉を殺ぐ。
これで、何人目だろうか。一人、二人、三人・・・・
十、百・・・・
この剣でもう、三本目だ。一本目は、貫いて、骨を絶つときに折れた。
二本目は、確か・・・命乞いする敵に酷く苛ついて、ぐちゃぐちゃにした後に、剣が酷く汚れた気がして、捨てたのだ。
そして、今、漸く三本目も終わり・・・だろう。これじゃぁ、斬る事は叶わない。
切り裂く瞬間の、手応えをリアルに感じる事は出来るけれど、もしなにかあったとき、この剣ではもう対応出来ないだろう。
最初は、人を殺した数を数えていた。それをやめたのは、一体どれくらい前だったか。
そんなに、日にちは経っていないだろう。
けれど、確実に俺はおかしくなっていた。
麻痺。だ。
ただ、この手が赤く染まることに怯えていたのに、今では赤に染まる事を求めている。
人間を一人殺しては、堪えようも無い快感が体を通り抜けるのだ。
それは、そうオーガズムのような。
その血を、浴び
その悲鳴を聞き
死臭に酔う
あれほど、嫌悪していた血の味も、温もりも
それが欲しくて欲しくて、どうしようもなる始末。
そう、俺が殺すのは人間。人間だけ。まぁ、戦闘中にモンスターを殺す事はある。
モンスターなんて、殺したうちに入らない。
あれは、また別なのだ。
そう、人間だけに限られる。
殺す瞬間、煮え繰り返しそうになる感情と共に薙ぎ切る。
骨を絶つ感触。
内臓を抉る、感触。
また、殺した。
これで何人目。
そんなの判らない。
ただ、どうしようもない、感情をぶつけるのだ。
憎くて憎くて、どうしようもない。感情を。
湧き上がるのだ。
ただ、憎しみだけが。
「どうして俺を生んだ!!!!」
お前らのせいだ
「どうして、俺を造った!!!!!」
なら、最後まで責任取れよ。
そう、お前らには、俺を作った責任を取ってもらわなければ
ヴァン?んなの関係ないさ。ヴァンみたいな思想を作り上げたのは誰だ。
予言を遵守し続けて、予言の為に、街を見捨ててしまう人間達だ。
そして、俺はその予言に殺されかけたんだ。
生憎生きてはいるけれどな。
人間様様ってか?この命が、世界を救うんだったよな?
あぁでも残念。俺が作られたときから少しずつ預言は狂ってんだ。
世界を救うなんて、あり得ねぇ。俺は、死ぬけどな。でも、戻ってこれんだよ。
馬鹿だなぁ・・・・俺は同一体なんだぜ?
取引したんだ。誰も知らない。秘密の取引。
ローレライとな。
自分を救えといって、救ってやるかわりに、俺の望みも聞けといったんだ。
だってそうだろう。世の中そう甘くないんだろう?
自分だけ救われて、はいさようならじゃぁ許さない。
あんたは許しても、俺が許さないんだよ。
救った英雄が、破滅に導く悪魔になるんだ。
どうだ。とっても素敵だろう。
あぁ、早くその時がこないだろうか。楽しみで楽しみでたまんねぇ・・・!!!!
だから、その楽しみは最後までと取っておくんだ
だから、今人間を少しずつ殺して我慢してやる
だからほら、一人、また一人、今はまだ少しずつ
何もかもが消える瞬間が楽しみでしようがない!!!!!
彼が世界を殺す