太陽に照らされて金色に光る綺麗な髪とか、俺とはまるで正反対の健康的なその肌の色とか
なにもかもが、どうしてか憎らしかった
憎らしいといえば、少し語弊があるかもしれないけれど、ただふと浮かんだ感情が
自分の中で唯一知っている名のものと、告示していたから
その感情は憎らしいものだと、名づけた。
苦手なのかと、問われれば答えは是である。
あの物言いだとか、態度だとか、何もかもが
嘗て自分にあって、そして今の自分には持ち合わせてはいないものだったからだ
こんな言い方をしてしまえば、「お前の何処と陛下の何処が」と突き返されてしまいそうだけれど、そう思ったものは仕方が無い。
判っている、彼は自分よりも賢く、彼の彼たる全てに、自身が溢れていてその彼自身から見えるオーラというものが
進もうとする俺の足を鈍らせ、苦手だと認識させるのだ。
彼も小さい頃、俺と同じ境遇だったと聞く。しかし、決定的に違うものがある。
彼には、支えられるべき人間が存在し、道が間違えていると判ったなら、それを訂正し、忠告してくれる人が居る
そして、彼は誰からも愛されている。その愛は、彼の培ってきた、時間と年月のお陰だが
自分はどうだろうか。
綺麗に彩られていた世界はただ幻で
自分を必要とし
自分が間違えているとしても、その事を正してくれる人間は居ただろうか
判りきっている。答えは、否だ。
そうだ、誰も居やし無かった。
甘い言葉で俺を拘束し、甘い態度で俺に接する
自分自身で間違っていると判っているのに、彼らは眉根を下げ、困ったように俺の名を呼んだ。
・・・叱りなどしなかった。
母親は「仕方ないわ。」と、俺の頭を撫で
父親はそんな言葉すらなく、ただ俺を見るだけだった。
困惑と、苛立ちだけを含んだ目で
両親がこうなのだから、屋敷にいるものなんて、例外だ。
怒りもしない。ただ「申し訳有りませんでした」と、機械的に述べるだけ
・・・ガイは怒ってくれるとしても、俺の求めている叱るという行為ではなく、宥めるという行為に近かった
もし、自分の周りにも、彼を支えるような人間がいたのであれば変わっていたのだろうか。
なんて、結果意味のない事を考えて、そんな陛下に嫉妬しているだけなのだ。
こんなくだらない事で、彼を敬遠し、憎らしいと思うなんて
やはり自分は愚かなのだろう。
陛下の私室に呼ばれた俺は、嫌ですともいえるはずがなく
部屋に着き、入れと言われ入ったらこの様だ。
「ルーク、お前俺が苦手なんだろう」
普通そんな事を聞くだろうか?
さもなさ気に彼は言い放ち、そんな彼に俺は「いえ、」と言葉を濁す事しか出来ない。
「はい、そうです。」と、言ったとしても、彼は「おぉそうか」と笑い飛ばすだろう。
あぁ、そしてその姿が憎らしくて仕方が無いのだ。と、目の前にいる人物を見ながら考える
「どうした、ルーク。お前は、俺が羨ましいのか」
本当にどうして、彼はこんなにも
目を細めてしまいそうな位に、輝きを放つ彼を見ているのが辛くて、瞼を伏せ、磨き上げられた床とにらめっこをしながら
早く、解放して欲しい。こんなところにいたら、自分はあの光に取り込まれて消えてしまう
早く自分で遊ぶ事に飽きて欲しいと、強く願いながらただただ、自分の足元だけをみつめ、「そんな事は無い」と、告げた
何も言わなければ、彼は何かを言うまで話してくれない。放たれた言葉は、震えてはいないだろうか。
掠れてはいないだろうか。
あぁもう、本当に
「人の目も見れないのか?ルーク。どうした言いたいことがあったら言ってみろ。」なんと傲慢で、自信溢れる言葉だろうか。
昔の俺に似ていて、そして、一つも似ていない目の前の彼
周りに叱ってくれる人がいて、自分を信じる事が出来る人
決して周りに依存はしないで、自分の信念を貫く人
寂しい人ではあるのかもしれない、でもその寂しさを消し去ってくれる誰かが彼の周りには存在する
黙って踵を返すのは流石に躊躇われたので「すいませんでした。気分が悪いのでもう、失礼します」とあからさまに嘘を使って足早に帰ろうとする
(これ以上、此処には居られない。居たくない)
踵を返し後ろを振り向いた刹那、腕を何かに引っ張られ、たたらを踏む
原因は、ピオニー陛下が俺の腕をがっちりと掴んでいるからだ
「っ何を、するんですか!!!」かっと、頭に血が上り見上げる形になる、彼の顔を睨み付ける
「ほぉ・・・見れるじゃないか」
脳内に浮かぶ???の符号。
「それでだ、ルーク。お前は、俺が羨ましいのだろう?」
その顔に明らかな笑いが浮かんだのをみて、判らない感情が胸を、脳内を支配する
瞬間、陛下の顔が困ったと、いう形を作った。
それはそれは、なんとも決まりの悪い顔をする。
「あーいやーあのなー」
どうしてこの人が困るんだ。困ってるのは俺の方だ!
間延びのした腹の立つ喋り方をして、何かを言おうとしている
もう、耐えられない
「・・ ・ ・・・」
ボソリと呟いた、声に気付いたのか
視線を俺に合わせるようにして、しゃがみこむ。
カッチーン。
頭にきた
その行為が俺を、子供扱いしているのだと、そう思ったからだ。
皆そうだ。俺を大人だと言ってそれ相応の態度を示せと言ってみてたと思ったら
まだ7歳の子供だろうと、子ども扱いをする
都合の悪い時、自分がその出来事から目を背けたいとき、俺を大人にしたり、子供にしたり
八つ当たりに違わないけれど、苛付いた。
押し殺した心を、意図もたやすくこじ開ける人だ。この人は。
きっと、本人もそれを自覚している、そして、俺に聞くのだ
「羨ましいのか」と
「羨ましい訳がないだろう!!!!!俺は、あんたが、憎らしいんだ!!!!」
誰からも、愛されて
自分を信じる事が出来て
信念というものを持っていて
間違いを正してくれる、友が居る
言ってしまったと、僅かばかりの後悔はあるが、もう止まらなかった。
「羨ましいはずがない!!!」
自分は、愛される努力をしないと愛して貰えない。
自分自身も信じる事なんて出来るはずが無い
間違いを正してくれる友なんて、居なかった。もしかしてと思っていた彼ですら、まやかしでしかなかった
手を振り解こうと、体を捩るが一向に解けない。
この男の何処にこんな力があるのかそんなことは知ったこっちゃないけれど
その事すら癪に障る
「離せ離せ離せ!!!!」
ここまでくれば、子供の癇癪でしかない。
あーもう自分で自分の事も子供だ大人だと、別けてしまうなんて
もう、本当に・・・・
憎らしい!!!!
明らかに俺は混乱していた。暴れる俺を、まだ離そうとしない
「離さないと、「どうなるっていうんだ?」」
ぶちり、どこかで何かが切れる音がした
「こうなるんだ!!!」と叫んで脛を思いっきり、蹴って逃げてやった。
「陛下。ルークで遊ぶのはやめて下さい。後々迷惑です」
「えぇーだって、あいつ可愛いんだもん」
「だもん、だなんて可愛子ぶるのはやめてください。幾つですか貴方は・・・判っているでしょう。ルークは貴方が苦手なんです」
「違うぜー。ジェイドも判ってないなー。あれは俺が好きなんだよ」
ケラケラと、笑うピオニーにジェイドは冷めた視線を送る。
「それにしても、痛かったなーほれ、見てみろ」
自慢だと言わんばかりの言い方で、ズボンの裾をあげるとそこには痣
「自業自得でしょう」
「んーでも、ほんと可愛かったなぁ・・・怒ったか顔も可愛いなんて反則だよなー」
「・・・・馬鹿ですか。貴方は」
溜息を零しながら、控えていたメイドに冷やすものをと告げると、かしこまりましたという、事務的な声が響いた
「まぁ、でも泣きそうな顔も中々なもんだった」
あはははと、豪胆に笑う。
一体この人物はあの子に何をしたのかと、少し心配になったけれど、生憎簡単に理解できるほど、この人物は容易い人ではなかった
「こればっかりは、あの子に同情しますよ。」
「まーな。でも、あいつを理解できるのは俺だけ、だからな」
急に、真剣みを増して「俺しか居ないんだ」そんなことを言うものだから
あの子に対するピオニーの本気をジェイドは見た気がした
「今度来たら、絶対」
逃してやらない
そう宣言する、主にジェイドは嘆息し、厄介な相手に好まれてしまったルークに憐れみを覚える
そして、いつの間にか居たメイドから冷えたタオルを渡してもらい、彼に投げて早く冷やしなさい、と言い放つ
(せめて、もっと優しくしてあげればいいものを。・・・そういえば、この人物は好きな子ほど苛めるタイプだったか)
「つめてー。でもこれって男の勲章だよな」
顔に思い切り投げつけてやればよかったと、今度は違う意味がありあり篭る溜息を吐いた
羨ましいって何だよ!
憎らしいんだ!!
きっと、そうにきまってる。だってそうじゃないと、俺がずっと寂しがってるみたいだ
メモ
憎らしいには言葉そのままの意味と(しゃくにさわる。いやな感じだ。腹が立つ。)
(反語的に用いて)心がひかれていとしい。かわいい。という意味を持ったりするんですねー
この場合のルークは後者です。
憎い!じゃない。憎らしい(これ重要)
「にくらしい」の方が「にくい」よりも嫌悪の念がやや弱い by大辞林
羨ましいって、基本どんな事かルークは判ってないんだけど
陛下の言い方があからさまな挑発だったので、貶されたと思ってる。みたいな
羨ましいって何か判らないってのも可哀想な話ですが