膨大の量の音楽が、国中に広がる
英雄の帰還を喜び、英雄の死を讃辞する為の
盛大なパーティー
到る所に、黒の旗が掲げられ、国中の全ての人間が故人とされた彼を悼む
そして城では、もう一人の彼の帰還を祝して国を挙げてのパーティーを催している
喪を表す黒を掲げておきながら、彼の存在を忘れたかのように
もう一人の帰還を祝うなんて
矛盾だらけだ。
まるで、ちぐはぐな世界に迷い込んでしまったみたいな
そんな雰囲気に居た堪れずに、城を抜け出す
当ても無くただ、歩いていると、視界が紅い髪を捉えた
このおかしい、世界を作らせた今日の主役だ
「「アッシュ・・・・」」
いや、今ではルークと呼ぶのが正しい。
あの<ルーク>と旅をした仲間は、彼をアッシュと呼ぶ
でも、それすらもう赦される事はないのかもしれない。
アッシュと、呼ぶ事も最早・・・・
そう、世界が、人が認めないのだ
目の前の男はその名で呼ばれる事を認める事はないだろうけれど
「お前はルーク・フォン・ファブレだろう」と言われれば、答えに詰まる
だって、事実彼はルーク本人だからだ。正しく言えば、オリジナルルークだが
彼をルークと呼んでしまえば<ルーク>だった彼をどう呼べばいいのだろうか。
真実、<ルーク>となった目の前の男の動作を見逃す事無く観察する
(もしかしたら)
なんて、そんな甘い想像が俺の思考を一つに束ねる
(ルークかも、しれないだろう)
俺の呼びかけに答えるように、振り向いた彼はやはり
彼でしかなかった。
「アッシュ・・・・」
僅かに寄せられる眉間の皺
ルークとは似ても似つかない、視線の鋭さ
その事実を、一つ一つ確認しては、酷い気持ちが俺の胸を焼く
そうだ、ルークはもう。
居ない
「ガイ」
目の前の男が、どこか所在無さ気に俺の名を呼ぶ
今、俺はとても情けない顔をしているのだろう。
目の前の男の瞳が、何を言っていいのかどうしていいか判らずに揺れている
(なんで、そんなとこ似てるんだよ・・・・)
そんな雰囲気ではないのに、何もかもがおかしくて腹を抱えて笑いたい気分だ
未だに何も言わない俺に、どうしていいか判らずにそわそわしている姿は
本当<ルーク>にそっくりだ
「いや、まぁ・・・な」含みを有りっ丈に詰め込んだ言葉を吐き出して、<ルーク>が好きだといった笑みをしたためた
この世界を救ったのは<ルーク>だ
残り僅かだった命と引き換えに、身を捧げた
そして救った世界に、人に、彼は殺される
存在すら、奪われて
これぐらいの、苦しみ甘いもんだろう。
「そーいやぁ、言い忘れてたなって思ってさ。」
「お帰り、ルーク。お前の帰りをずっと待ってたんだよ」
俺だけでも、<ルーク>を生かしてやらなきゃ。
「おかしいのはこの世界さ。」
「俺じゃない」
<ルーク>が好きだと言った俺をお前にやるよ、ルーク。
ブログから、移したお話
このガイからすれば、殺されないだけましだろう。みたいな心境。
ナタリアと出来るのも赦さない。お前は俺のものだ的な
体がルークのものであるなら、お前は俺と共にいるしかないと。
アッシュはルークの記憶を持って帰還してるんで、拒めません。
アッシュはアッシュで負い目があるんで。
まぁ、ガイさまはもう、ルークに妄執のようなものを抱いてればいいよ。
そんなあんたが大好きだ
。