彼は笑っていた。
「どうしようもない、俺だけど・・・もう一度だけチャンスをくれないか」
そう言って、彼が湛えたのは美しすぎる微笑
アニスに詰られても、「仕方ないから」と言って笑っていた
ジェイドに向けられた冷たい視線にも、「然るべき事だ」とそう言って、苦笑していた
アッシュに罵られても、「事実だから」と、微笑んで
ティアに「目の前で死なれた困るだけだから」そう言われても、彼は「そうだな」といって、口角を上げた
俺が、伝えた俺の出自にも、彼はただ、笑って受け止めてくれた
そう、ルークはずっと、笑っていた
俺たちは、それに感けて見ぬ振りをしていたのだ。
気づかない振り。
知らない振り。
判らない振り。
7歳の子供。見かけは青年でも、心はまだ、成熟してなどいない。
そんな彼に背負わせたとても重い罪。
見ない振りをする。
必死に涙を堪えているのに
気づかない振りをする。
傷ついた表情を浮かべているのに
知らない振りをする。
彼が、笑っていない事に
感づかない事を装う
皆が皆、自分の罪に目を背けて、何もかもを彼に背負わせて
必死に頑張っている彼に、言うのだ。
「卑屈になるんじゃない。ルーク」
知った振りをして、判った振りをして
「レプリカだなんて、言ってもお前はルークだよ」
本当の意味で理解する事なんて出来ないのに
俺達が何かを言う度に、彼は笑って、そう
笑って何もかも受け止める。
口角を上げて、目を細めて、まるで人形の様に美しい微笑を湛える
その笑顔の意味を知っているのに、その笑顔に潜められた意味を知っているはずなのに
知らない振りを突き通す。
その微笑を溢す顔に拭っても消えない涙の痕が見えるのに
笑って、お願い。
笑顔を奪ったのは、他でもない、「俺たちだ」
呟いて哂う。