遠くで俺は眺めている

とても幸せな風景を






その光景の中、仲間たちは幸せそうに笑っていた。

ガイの手袋に包まれた手が、赤い髪を撫でる

ジェイドの紅い瞳が緩やかに弧を描く

アニスは彼の手を引っ張り

ナタリアはそんな光景に頬を緩ませて笑っている

ティアは長い髪を揺らして、ミュゥと共に彼のことをそっと見つめている





「俺は、居なくても何も変わらない」


自分がぽつりとつぶやいた言葉で自分自身の心は締め付けられた

こんな言葉を言ったとしても、結局は誰にも届きはしないのに、状況を確認するかのように

言葉が零れてしまう


例え、自分自身を傷つけるものであったとしてもだ。




真紅の髪の色を持つ彼は、俺の前では見せないような顔でとても幸せそうにそっと笑っている







その場所に行っても、自分が受け入れらる事なんてあり得ないのに、それでも、独りになりたくなくて
足は勝手に彼等の元へと歩みを進める



近づいて行く俺を視野に入れた仲間と、真紅色の髪を持つ青年は笑って俺を迎え入れてくれた





はずだった。





笑っていた顔は、急に顰められてあの時と、同じ顔に変わる




「どうして、やって来たんだよ。折角楽しく話していたのに」

あの時俺に、冷たく言い放った声と同じ質のものでガイが俺を咎める

「ルーク。時と場合を考えて下さい。今がどんな状況か判っているでしょう?」

あの時俺に言ったように、無機質な何も含まぬ声でジェイドが告げる



他の皆は何も言わずに俺を見ている。そう、あの時と同じ視線で




告げられる言葉、一つ一つが胸に突き刺さって行く
俺は、ただ、地面を見つめるしかなかった。



(やっぱし、俺は居ちゃいけなかった)


(俺は、紛れ込んじゃいけない異物でしかない)





込み上げてきそうになる涙を寸での所で食い止めて、零れない様にと前を見ると
俺と同じ顔の、それでいて、綺麗な真紅の髪を持つアッシュ・・・

いや、本物のルークが俺を見てただ当たり前のように告げる







「屑、まだ気づいていないのか?お前は必要ないモノなんだよ」









皆もその言葉に賛同したかの様に、俺にちらりと視線を寄越して、また仲良く喋りながら歩き出していった







取り残された俺。動くことも出来ずに、彼が告げた言葉を繰り返す

「俺は、不要・・・・必要ない物・・・・」


我慢していた、涙が一気に零れ出す





ポロポロと幾筋の道を頬に残しては、重力に逆らわずに落ちて行く








「俺は、要らないの?」
(皆も要らないって思ってるの?)



























汗ばむ体、シーツを濡らしていた涙の跡


全てが、夢だった




シーツを掻き寄せて、体に巻きつける

無意味に震える体を、今もまだ流れ続ける涙を


俺を照らす月明かりから隠してしまいたかった。




そして、心底安心する
今日は、仲間とも別の部屋だったから、この自分の姿が見られる事もない。


こんな姿を見せたら、彼らはなんと言うだろう。

「みっともない」というのだろうか

それとも、何も言わずに呆れた顔をするのだろうか・・・・


どちらにしろ、誰も居なくてよかった





(本当は傍に居て、欲しいのに)






どうして、あんな夢をと思う。

本当ならば、あの場所で笑っているのはアッシュなのだと、戒めの様に、俺に示しているのだろうか








「俺は、要らないの?」



息をするかのように呟いた言葉は、俺の心を揺るがした

自分の存在を、自分ですら認められなくなっている。
間違いなのだと、自分でそう認識しているのだ




そのことがどんなに胸を刺したとしても、それは事実だからしょうがないのだと



「俺が、俺を認められなくなったら・・・俺どうしたら良いんだよ・・・・」



掻き寄せたシーツを涙でぐしゃぐしゃになった顔に押し付ける


漏れそうになる嗚咽を必死に堪えて、涙を流す







(どうしよう。どうしよう)
(自分が消えてしまえば良いなんて、考えてしまう)


(俺、自分が要らないって思ってる)
(どうせ誰も、何とも思わないんだから)


(どうしよう。どうしたら良いの)
(怖いよ。俺)




















「俺は、要らないの・・・・?」
(だれかに、必要だって言って欲しい)



















呟いた言葉
答えは与えられない

誰か、早く気づいてあげて。