「ほらほら!!俺を殺したいならもっとちゃんと此処を狙え!!」
心臓を指差しながら狂ったように叫ぶ
「どうした!!ほら!!!俺ならいつでも死んでやるぞ!!」
嘲笑うかのように剣を翻す
がちりと、刀のぶつかり合う音が響く、接合部分が摩擦を起こしてじりりと散る閃光
襲撃者との殺し合いに嬉々とした表情を浮かべる。
切り刻む瞬間に快楽を得ているかの様なその恍惚とした顔に、いつもの彼など、どこにも見当たらない。
周りには鮮やかな赤が散る。まるで、赤い花弁がはらはらと舞うように散っているかのようだった。
しかしそれはそう見えるだけで、辺りの至る所に血は飛び散り、酷い有様だった
一向に勝負の着かない殺し合い。襲撃者の体には何箇所も切り傷が見えるのに、彼には傷一つ付いていない
そう、ルークは未だに無傷だった
光を纏って軌跡を描く剣、血に濡れて鈍く輝く研ぎ澄まされた刃
それを揮いながら、嬉々とした顔をする
その表情はまるで血に飢えた獣
「早く、しないとッ!大変な事になるぞっ・・・と」
喉でただ笑って目の前で傷ついていく人物を翻弄する
「っっつ!」もう敵わないと歯噛みをする相手を見つめて
(残念だ)
止めだというように剣を空高く振り上げる
「これで、最後だっ!!!!!」
(本当に、残念だな)
相手の驚き恐れ慄いた顔を網膜に焼き付けて
飛び散る、鮮血。顔に髪に、服に、赤の模様を作っていく
「ほら、だから大変な事になるっていったのに・・・ちゃんと教えてやったのに」
自分に纏わりつく生温いそれを袖口で拭って不快さを拭う
それでも大量に浴びたソレは彼の赤とは言いがたかった髪を赤に、真っ赤に染めて滴る
先ほどの狂喜は醒めてしまったかのように、口からごぽりと血を溢れさした死体に冷たい視線を送る
俺を狙ったのは、まだ若い青年だった。そう、俺とまだ年も変らないのではないだろうか。
赤茶の髪、瞳はグリーンだ。
その髪は短く切り揃えられ、その身に纏っていた衣服は、白い布が適度な具合に見えてそれはとても赤に映えていた
戦っている最中にも感じた少しのデジャブを感じたのは
出で立ちが、そう
何処か俺に似ていたから。
その赤に成り切れなかった髪が刃先に触れ散る
そのグリーンでも少し色の違う瞳が憎しみに濡れる
似ている似ている。とても、似ている。
必死に戦おうとしても、まだ少し恐ろしくて。
まるで昔の俺の様だ
けれど今ではまるで違う。
今の俺は昔の影も見せないのだから。
死体の持ち主と俺の唯一違った点は、彼は俺を狙う者だったっという点
彼は狙う者。俺は狙われるモノ。
(本当に、何たる様だろう・・・・)
どれだけの人に恨まれているかなんて俺には把握は出来ない。把握も出来ないほど俺はこの手を赤く染めたから。
そう、だから多分この横たわる彼もまた、俺に何かを奪われた一人だろう
「そうか、お前も俺が憎いんだな・・・可哀想に。それでも俺を殺せなかったなんて」
殺そうとするならば怯えるな。そんな陳腐な言葉を言うつもりなどない。
怖いものは怖い。
この青年はそうだったのだろう。その手が血に塗れる事も、肉を切り裂くあの感触も
目を見開く、死に逝く瞬間も、彼にとっては恐怖でしかなかったのだろう。。
そう、彼はとっても人間らしい、人間。
「人間ですら無い俺に、殺されてしまうなんて・・・・可哀想に」
膝を折り伏せた死体に触れる
まだ暖かいその体を抱き上げる
開かれている瞳はただ開かれているだけ。
「本当に・・・」
赤茶の髪を撫でる。血に濡れてベタベタになった髪に手を通して、緩慢な動作で
その開かれた瞳に写る俺はとても哀しそうに笑っていた
「愚かだなぁ。お前達は」
立ち上がる。大きな音を立てて落ちる死体。
それに目も暮れず、剣に着いた血液を払い落とす
「奪われれば、奪われる」
知ってる。だから、俺は殺す。
「その連鎖は、終わらない」
だから何度も何度も、繰り返す。
「憎しみに勝るものなど、この世には無い」
だから、終わらない。
「そうだな。今度は誰に、殺されようか。」
待ってるんだ。
その刃が俺を貫く瞬間を
その刹那はいつだろう?
グロテスク。・・・?になりきれてる?
トントンと出来たこのお話。殺す事に慣れるか、慣れないか。
怯えるか、怯えないか。