「世界の人々の為に、死んでくれ」



そう、俺に告げた彼等の顔を
俺は忘れることなんて、無いだろう。


誰もが、俺の死を望んでいた。

誰しもが、同情と哀れみで瞳を揺らしていた




そして、皆は揃えた様にこう言うのだ

「どうして、お前なんだ・・・!」



でも、彼だけは他の者達とは違った事を言うのだ。


「私が権力者なら、『死んでください』と言うでしょうね」



なんて、彼らしい。
その言葉に笑みが零れる



でも、その夕日を思わせる紅い瞳は
何かを思案し、決して自分の望む結論には永遠に辿り着かない事に絶望していた・・・・のだと思う。




今では、もう聞く事さえ叶わない。
だって、この体は第七音素と共に在り、形を成してなどいなから。
















どれだけ、彼に逢いたくても


この手が彼を捕らえる事なんて出来ないんだ


どんなに掴もうとしても、捕らえる手など俺には無い。



その事実に絶望して、哀しくて、苦しくて、どうしようもないのに。




俺には涙を流す瞳も、無い




「好きなんだ」
「ありがとう」



彼に想いを伝えたいのに、声を発する器官なんて
もう何処にも存在しない。








あぁ、嫌だ。俺はまだ、彼に好きなんだって告げていない。
ごめん。と言えなかった。
ありがとう。って言いたかった





言いたいんだ。聞いて欲しかったんだ。だから、だから





消えたくない!還りたくないなんて、ない!!!


なぁ、助けて、くれよ・・・・・!!誰か!お願いだ!





俺が救いを求めるなんて許されないから、少しでも、ほんの少しでも良かった。


あんたに・・・・・赦して貰いたかった・・・










言いたい事とか、聞きたい事とか、ぐるぐる回って溢れて、零れておかしくなりそうだ















狂う事すら叶わないけど。
うならば、もう一度
「愛している」
どれだけ、伝えたくても俺の声は風にも乗れない