「俺の体、透けてる・・・・な」
月明かりに翳した手を見上げ呟く
そこに手があるのに、向こう側にある遮られて見えない筈の月が薄っすらと見える
「・・・仕方ないんだよ・・・これが俺の、運命だ」
必死に言い聞かせては、心の底で何度も同じ質問を繰り返す
(どうして俺なんだ)
(何で俺が、死ななきゃいけないんだ・・・・)
本当ならば、アクゼリュスと共に死んでいた筈なのだ。俺の命は。
「でもどうしてか、俺は死ななかった・・・」
ユリアによって詠まれた預言。
確実に訪れるだろう、結末。
俺の死は預言で詠まれていた。けれど、実際アクゼリュスで死ななかった
「預言は、覆された・・・」
だが、預言を覆すと言う事は世界の原理を崩す事と同じだったのだ。
世界が決め、世界が導く。
世界は、僅かな歪みをも赦さなかった
俺の後を影のように付き纏ってくるのは「死」のみ
物言わぬ、世界そのものが俺の死を望む
そして、日は巡り瘴気が世界を覆い始める
それを世界の危機だと考え、王達は俺にただ告げた
「俺に、死んで欲しい・・・か」
苦渋に満ちた表情で、哀れみを俺に向けて、告げるのだ
「逃げても構わない・・・・?違うだろう。逃げたらお前は罪人だって言いたいんだろうが・・・・」
あんな言葉は、俺にとって最高の脅し文句でしかないのだ
それを判っていて、彼等は俺に告げる。逃げ道を塞ぐように
レプリカの命と、オリジナルの命
どちらに比重があるとしたならば、彼らにとっては断然オリジナルなんだろう。
「あんた等は、オリジナルだから・・・」
レプリカの気持ちは判らない。レプリカは一方的に作られて、疎まれて、邪魔なら捨てる事の出来るものだと
心の何処かでは思ってるんだろう・・・?
オリジナルの気持ちなどもう判らない。俺がレプリカだと告げられた時点で。
何もかもが反転してしまった。彩る世界も、モノクロに変ったんだ。
白と黒。どちらかしかない世界。
それでも、それでも・・・・
「・・・・やっと、楽しいと思えたのに・・・な」
待っているのは、俺の死を望む世界と、人々だけ。
「いやだ、俺、死にたくないよ」
死神は常に、俺の傍で笑ってた。
俺はそれに気付きながら、知らないフリをしていただけ